検索

Google
Web www.icefree.org

RSS of recent changes

 

実験 温湿度計SHT-71の評価

2017-06-20 (火) 23:23:54 (2494d)

温湿度計SHT-71の評価

センサの仕様

空調の自動制御のための温湿度センサとしてSensirionのSHT-71を使いました。

湿度
測定範囲 0〜100%RH
精度 ±3%RH(@ 20°C〜80°C)
繰り返し精度 ±0.1%RH
分解能 0.03%RH

温度
測定範囲 -40°C〜120°C
精度 ±0.5°C @ 25°C
繰り返し精度 ±0.1°C
分解能 0.01°C

インタフェースがI2Cで、精度を気にせずにケーブルを伸ばせる使いやすいセンサです。
値段がちょっと高いのが難点です。

30°Cでの温度の精度は約±0.5°Cです。

湿度の精度

湿度についてどれくらいの精度があるか確認してみます。

JIS B 7920:2000の飽和塩法で確認します。

手軽に使える
・塩化カリウム
・塩化ナトリウム
・炭酸カリウム
・塩化マグネシウム
を使います。
このあたりだと余ってもあまり困りませんし、
食品添加物にできるものなので、多少飛び散っても大丈夫です。

それぞれ、30°Cでの湿度は
83.6±0.3%RH、75.1±0.2%RH、43.2±0.5%RH、32.4±0.2%RH
です。

用意したもの
・食卓塩100g x4
・精製水 500ml
・塩化カリウム(試薬) 500g
・塩化マグネシウム(試薬) 500g
・炭酸カリウム(水草向け) 100g

水道水でも良いですが、安い(100円もしない)ので、精製水を使ったほうがいいです。
塩化ナトリウムは安い食塩だと、NaCl99%以上です。味にこだわりのある塩は純度低めです。
他は、高純度なもので、試薬か食品用あたりを使ってください。500gで各1500円くらいです。

20111009-P1020099.jpg

飽和塩水溶液の作り方

塩化ナトリウムの場合。

買ってきた食卓塩の容器に精製水を適量入れます。
水溶液にすると若干体積が減るので、塩を抜かなくても大丈夫です。

割り箸でグリグリかき混ぜます。

シャーベット状になっていれば完成です。

静置して上澄み液ができるようなら、上澄み液を捨てます。

他の塩も同様ですが、塩化マグネシウムは溶解熱が結構あるのと、
水を加えると固まるので、水の中に塩化マグネシウムを少しずつ加えていきます。
別容器で作ってから詰め込んでも良いです。

注:
容器は、食卓塩のガラス容器を使いました。
かなり丈夫で便利ですが、間違って食卓塩として使わないよう要注意。
1個70円くらいです。

測定方法

食卓塩のキャップを加工して、密閉された状態でセンサが使えるようにします。
測定したい飽和塩に繋げば、手軽に測定できます。

20111009-IMG_8545.jpg

センサ出力をPCでロギングするアプリを作って、半日くらい放置します。
その間、なるべく室温を一定にします。
うちの場合、空調で30±1°Cくらいになっています。

その程度での変動も測定には影響が大きすぎるので、
変動を緩やかにするための簡単なしくみを用意しました。

20111009-P1020103.jpg
20111009-P1020104.jpg

気休めの断熱。これを段ボール箱に入れて蓋をしています。
室温の細かい変動の影響を受けにくくなります。

計測

はじめの測定

ビンをそのまま室内に静置する形で測定しました。
測定間隔は1時間で、20時間ほど測定しています。

kcl.gif

最小二乗法で近似すると、

-1.72386 t + 135.094

です。
計算すると30度では、83.4%RHということになります。

JIS B 7920によると、
20°Cと30°Cでの湿度差は、1.5%RH
30°Cでの湿度は、83.0±0.3%RH
です。

結構いい数字ですが、近似するにはサンプルが少なかった。
次から10分単位で記録します。

また、温度の変化は湿度にかなり影響するので、なるべく変わらないように工夫します。

30°C 83%RH 100kPaの場合、絶対湿度は0.0229 kg/kgです。
これが、29.5°Cに下がると85.5%RHになります。
30.5°Cに上がると、80.6%RHです。
飽和塩による湿度調整よりも速い速度で温度が変化したら
一定の湿度にはなりません。
0.1°C/hくらいには収めたいところです。
その条件なら±0.5%RH/hくらいになります。

エアコンで室温が±0.5°Cくらいに収められるので、
適当な段ボール箱に入れるだけで実現できそう。

KCl

温度101520253035
湿度86.8±0.485.9±0.485.1±0.384.2±0.383.6±0.383.0±0.3

温度変化がある場合の平衡状態になるまでの様子

kcl3.gif

10分間隔で76点。初期値(30.47°C,83.17%RH)。
(28.1, 84.2)で安定してきた所で設定温度を2°C下げました。
その後、(26.5 84.6)に収束

赤のラインは理論上の湿度の中央値です。

NaCl?

温度101520253035
湿度75.7±0.375.6±0.275.6±0.275.5±0.275.3±0.275.1±0.2
nacl.gif

28.4°C 76.0%RH

反時計回りで戻ってきました。
おそらく、76%RHで安定していて、温度の下落に対しても安定した湿度を
保てていたけれど、温度上昇にはついて行けずに若干湿度が下がったのだと思います。

というわけではないらしい。
もう1回測っても同じような結果になりました。
ヒステリシス特性のような感じ。

nacl2.gif

温度が下がる局面(過剰な水蒸気を吸収する)と、
温度が上がる局面(水蒸気を放出する)の2値があるようです。

センサの特性なのか、飽和塩の特性なのかは知りません。
値の振れ幅からして、センサっぽい気はします。

K2CO3

温度1015202530
湿度43.1±0.443.2±0.443.2±0.443.2±0.443.2±0.5
k2co3.gif

28.5°C 45.8%RH

MgCl2

温度1015202530
湿度33.5±0.333.3±0.333.1±0.232.8±0.232.4±0.2
mgcl.gif

28.3°C 34.5%RH

湿度が高いもののほうが早く安定するようです。
蒸気分圧が高い、モル分率が大きいというあたりとかが要因な気がします。
あとは、液面の状態を維持しやすいとか、低湿度のものは反応熱が大きいとか
そういったことも影響しているかも。
KCl,NaCl?は扱いやすくていいです。

水が多すぎると正しい湿度にならなくて、
水が少ないと安定するまでに時間がかかるようです。

±0.5°C以内で24時間、その後±0.05°C以内で2〜3時間
くらいに温度を安定させないと
±0.1%RHくらいの精度は出ないようです。

ここまでの28.5°C前後での4つの計測結果を並べると、
低湿度での誤差が大きくなっている、ようにも見えます。
(サンプルが少なくて断定できません)

error28.gif

NaCl?で温度に対する変化を調べる

大体、仕様通りの値が出ていそうなことは分かりましたが、
温度に対する変化も調べてみます。

温度による湿度変化が少なく、安定が速いNaCl?を使います。
5°C〜35°Cで、75.7%RH〜74.9%RHです。

20111010-IMG_8549.jpg

温度調整ができる恒温槽とか無いので、そこらへんにあるもので代用。
閉じたダンボールの上に氷枕を乗せたら24.5°Cくらいになりました。
3時間くらいしかもたないのが難点。
段ボール箱の中に入れると20.5°Cくらいに。

abs25.gif

絶対湿度でのグラフ。
赤のラインは75.6%RHでの値。気温に依存した値です。


temp3.gif

謎です。
同じ温度変化になるようにすると、結構な精度で同じ湿度変化になります。

恒温槽

やっぱり恒温槽がないとダメなので、簡単に作ってみます。

構想。
魔法瓶にペルチェ素子つけて、攪拌すればいいかなと。
温度を測って直接制御すると精度が悪そうだから、
外気温と内部温度から熱伝導の特性を測って、
その予測値で制御したら結構いけるんじゃないだろうか。
SHT-71で計測の下限でフラつく位が目標。

と思ったら、繰り返し精度±0.1°Cだった。
もう1桁くらいいけないかと思ったんだけど。

買えるセンサだと、
PR103J2
の0.05°Cが限界っぽい。
0.01°Cのセンサもあるけど、値段と大きさが無理。

これとリファレンス電源ICとADC使えば
正確に計測できそうだけど、なんか当初の目的と違う気がするので
SHT-71でいいです。

温度勾配に限界がある
ペルチェ素子は精度が取れなさそう。
これは、熱移動なので電力に対してリニアに温度変化するわけではない?というあたりで。

という気がするので、構想2時間でペルチェ案は棄却。
素直に抵抗でも使います。
この場合、目的の温度以下の外気温(外気でなくてもいいけど)が必要。
冷蔵庫にでも突っ込めばいいか?

ふと気づいた。今、持っている2個のSHT-71は空調制御で使ってるから
実験できるような余剰はなかった!

とりあえず、魔法瓶発注した。
THERMOS ステンレスポット 1.0L ステンレスブラック THS-1000 SBK
Amazon 1,980円。
外形:19×12.5×20cm

ヒートシンクは、かなり前に買ったIntelのヒートシンク付き45mm角ファンがあるのでそれが使えそう。
これは、BXマザーのハイサイドスイッチが飛んで張り替えた時に、
放熱に難があるので、そのために買ったファンの余剰。
たしか未使用ジャンク品。
そんなわけで10年くらいたって、久々に活躍しそう。

RSコンポーネンツでSHT-75発注した。
高いので流用できる形で使おう。

制御は、中の熱容量などにもよって違うだろうから
パラメータは勝手に調整してくれる自律制御がいい。

使ってる冷蔵庫でいいんだろうか。
開け閉めするし。
ダメそうなら、安い保冷庫買って、突っ込んでもいいかも。
制御がダメそうなら自分で作ればいいし。
でも、発熱量が多いとまずいかもしれない。
(冷蔵庫は断熱してるので、発熱してるものを中に入れると
それよりも多くの冷却性能が必要)

#いつものように目的を見失っています。