船舶に乗り組む衛生管理者
概要 †
国土交通省管轄(←厚労省では無い)。
船舶という特殊な状況からか、緊急時に限りますが、極めて異例なことに医療行為の一部が許される資格。
(条約の影響もあるのだと思います)
(H24.1.1からは以下が明記されるようになりました。旧免許は交換可能です。)
STCW条約(1978年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約)附属書第6章第4規則の基準に適合する者となります。
証書の英語での記載は、Certificate of Proficiency for Health Supervisor です。
看護師、薬剤師等は書類申請だけで取得できるので、その手の人はお手軽に資格を追加できます。
それ以外の場合には、講習か試験で取得します。
講習は、一定の受験資格が必要です。
以下は、試験で取得する方法についてです。
受験地
横浜・神戸のどちらかです。1年毎に持ちまわり。
H27年度は横浜&仙台で行われます。(告知はされましたが、結局、仙台では実施されませんでした。)
【筆記試験】
- 労働生理
- 船内衛生
- 食品衛生
- 疾病予防
- 保健指導
- 薬物
- 労働衛生法規
マークシートではありません。
主に多肢選択ですが、稀に記述なことがあります。
【実技試験】
- 救急処置
- 看護法
試験日
12月平日9:00−16:30
H27年度は1月でした。
(受験手数料)
5,400円(受験申請書に収入印紙を貼付。)
(受験申請に必要な書類)
衛生管理者試験受験申請書
(国土交通省のWEBの他、各地方運輸局海上安全環境部、北陸信越運輸局海事部、運輸支局、海事事務所又は沖縄総合事務局運輸部において配布しています。)
写真一葉(縦5cm、横4cmのもの)
(正面、脱帽、上半身、申請前1年以内に撮影)
(裏面に氏名を必ず記載して下さい。)
手数料5,400円に相当する収入印紙
戸籍の謄本、抄本又は記載事項証明書
(申請前1年以内に作成されたもの)
(受験申請方法)
上記受験申請に必要な書類を揃えて窓口にて申請する。なお、郵送により申請する場合は、受験票を郵送するので、返信用封筒(定形郵便物で送付できるサイズ・宛先記載)及び郵便切手392円分を同封し書留郵便にて送付すること。
(受験申請受付期間)
平成25年10月15日(火) 〜 平成25年11月25日(月)
受験人数は、年1回の試験なのに毎年1桁です。
基本的に試験では取得しない資格です。
試験開場は、横浜は横浜第二合同庁舎です。神戸は神戸運輸監理部です。
建物のお勧め度としては、横浜の方がお勧めです。元々は横浜生糸検査所だった建物に高層棟を付随させた面白い作りになっています。
根拠法 †
船員法
(衛生管理者)
第八十二条の二 船舶所有者は、左の船舶(前条各号に掲げるものを除く。)については、乗組員の中から衛生管理者を選任しなければならない。但し、国内各港間を航海する場合又は国土交通省令の定める区域のみを航海する場合は、この限りでない。
一 遠洋区域又は近海区域を航行区域とする総トン数三千トン以上の船舶
二 国土交通省令の定める漁船
○2 衛生管理者は、衛生管理者適任証書を受有する者でなければならない。但し、やむを得ない事由がある場合において、国土交通大臣の許可を受けたときは、この限りでない。
○3 国土交通大臣は、左に掲げる者に衛生管理者適任証書を交付する。
一 国土交通省令の定めるところにより国土交通大臣の行なう試験に合格した者
二 国土交通省令の定めるところにより国土交通大臣が前号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認定した者
船舶に乗り組む医師及び衛生管理者に関する省令
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S37/S37F03901000043.html
(衛生管理者試験)
第九条
法第八十二条の二第三項第一号の衛生管理者試験は、筆記試験及び実技試験とする。
2 筆記試験は、次に掲げる科目について行なう。
一 労働生理
二 船内衛生
三 食品衛生
四 疾病予防
五 保健指導
六 薬物
七 労働衛生法規
3 実技試験は、次に掲げる科目について行なう。
一 救急処置
二 看護法
第十条
年令二十年未満の者は、衛生管理者試験を受けることができない。
(衛生管理者資格の認定)
第十二条 国土交通大臣は、次に掲げる者で衛生管理者としての業務を遂行する能力を有すると認められるものについて、法第八十二条の二第三項第二号 の規定による衛生管理者の資格の認定を行う。
一 医師
二 歯科医師、薬剤師又は獣医師
三 保健師、助産師、看護師又は准看護師
四 医学士、歯学士、薬学士又は衛生看護学士
五 医学、歯学その他の保健衛生に関する旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)に基づく旧専門学校卒業者
六 外国で医師免許を得た者
七 労働安全衛生法 (昭和四十七年法律第五十七号)の規定による衛生管理者の資格を有する者で、船舶に乗り組んで二年以上船内の衛生管理に関する業務に従事した経験を有するもの
八 衛生管理者として必要な知識及び技能に関する講習であつて国土交通大臣の登録を受けたもの(以下「登録講習」という。)を修了した者
九 その他前各号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認められる者
対策 †
過去問 †
過去問は、情報公開を利用して開示請求することもできますが、国土交通省本省で行政サービスとして提供してくれます。(2014現在)
窓口がどこかはしりません。WEBから情報開示請求で請求したら電話がかかってきて、「行政サービスでできますがどうしますか?」と聞かれて、「ではお願いいたします」という流れで郵送していただきました。
費用はかかりませんでした。実務に使わないのにすみません。
筆記 †
(配点は当日資料による)
一 労働生理 10点
二 船内衛生 15点
三 食品衛生 10点
四 疾病予防 15点
五 保健指導 15点
六 薬物 5点
七 労働衛生法規 5点
実技 25点
・救急処置
・看護法
合格基準
70点以上(ただし、各科目50%以上)
75点以上(ただし、1科目に限り50%未満)
実技の採点方法は不明。
試験のタネ本は、「衛生管理者教本」のようです。
船員災害防止協会で買えます。しかし、タネ本によくある、試験内容に対しては深すぎる内容なので、注意が必要です。
合格者数 †
過去の合格発表によると、以下の状況です。
H17 横浜
H18 神戸
H19 2007年 試験地 横浜 未実施
H20 2008年 試験地 神戸 合格者2名 不合格者不明
H21 2009年 試験地 横浜 合格者4名 不合格者1名以上
H22 2010年 試験地 神戸 合格者0名 不合格者1名以上
H23 2011年 試験地 横浜 合格者2名 不合格者1名以上
H24 2012年 試験地 神戸 合格者2名 不合格者不明
H25 2013年 試験地 横浜 合格者2名 不合格者不明
H26 2014年 試験地 神戸 合格者3名 不合格者不明
H27 2015年 試験地 横浜、仙台(仙台は未実施) 合格者8名 欠席1名
H28 2016年 試験地 神戸 合格者4名 不合格者1名以上
H29 2017年 試験地 横浜 合格者7名 不合格者1名以上
毎年、2〜3人くらいしか受験しないようです。
法規メモ †
(傷病中の給料請求権)
第五十七条 船員は、負傷又は疾病のため職務に従事しない期間についても、雇入契約存続中給料及び国土交通省令の定める手当を請求することができる。但し、その負傷又は疾病につき船員に故意又は重大な過失のあつたときは、この限りでない。
(労働時間)
第六十条 船員の一日当たりの労働時間は、八時間以内とする。
○2 船員の一週間当たりの労働時間は、基準労働期間について平均四十時間以内とする。
(休日)
第六十一条 船舶所有者が船員に与えるべき休日は、前条第二項の基準労働期間について一週間当たり平均一日以上とする。
(食料の支給)
第八十条 船舶所有者は、船員の乗船中、これに食料を支給しなければならない。
○2 前項の規定による食料の支給は、船員が職務に従事する期間又は船員が負傷若しくは疾病のため職務に従事しない期間においては、船舶所有者の費用で行わなければならない。
遠洋区域若しくは近海区域を航行区域とする船舶で総トン数七百トン以上のもの又は国土交通省令で定める漁船に乗り組む船員に支給する場合にあつては、国土交通大臣の定める食料表に基づいて行わなければならない。
(衛生管理者)
第八十二条の二 船舶所有者は、左の船舶(前条各号に掲げるものを除く。)については、乗組員の中から衛生管理者を選任しなければならない。但し、国内各港間を航海する場合又は国土交通省令の定める区域のみを航海する場合は、この限りでない。
一 遠洋区域又は近海区域を航行区域とする総トン数三千トン以上の船舶
二 国土交通省令の定める漁船
○2 衛生管理者は、衛生管理者適任証書を受有する者でなければならない。但し、やむを得ない事由がある場合において、国土交通大臣の許可を受けたときは、この限りでない。
○3 国土交通大臣は、左に掲げる者に衛生管理者適任証書を交付する。
一 国土交通省令の定めるところにより国土交通大臣の行なう試験に合格した者
二 国土交通省令の定めるところにより国土交通大臣が前号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認定した者
○4 衛生管理者は、国土交通省令の定めるところにより、船内の衛生管理に必要な業務に従事しなければならない。その業務については、衛生管理者は、必要に応じ、医師の指導を受けるように努めなければならない。
○5 前各項に定めるものの外、衛生管理者及び衛生管理者適任証書に関し必要な事項は、国土交通省令でこれを定める。
(年少船員の夜間労働の禁止)
第八十六条 船舶所有者は、年齢十八年未満の船員を午後八時から翌日の午前五時までの間において作業に従事させてはならない。ただし、国土交通省令の定める場合において午前零時から午前五時までの間を含む連続した九時間の休息をさせるときは、この限りでない。
(妊産婦の夜間労働の制限)
第八十八条の四 船舶所有者は、妊産婦の船員を午後八時から翌日の午前五時までの間において作業に従事させてはならない。ただし、国土交通省令で定める場合において、これと異なる時刻の間において午前零時前後にわたり連続して九時間休息させるときは、この限りでない。
(医薬品その他の衛生用品の備付け等)
第五十三条 船舶所有者は、次に掲げる船舶に、当該船舶を初めて自己のために航行の用に供するときに、当該各号に掲げる船舶の区分に応じ国土交通大臣が告示で定める数量の医薬品その他の衛生用品(以下「医薬品等」という。)を備え付けなければならない。
一 法第八十二条 各号に掲げる船舶(国内各港間を航海するもの、船舶に乗り組む医師及び衛生管理者に関する省令 (昭和三十七年運輸省令第四十三号)第二条 に定める区域のみを航海するもの及び同省令第三条 に定める短期間の航海を行うものであつて法第八十二条 ただし書の許可を受けたものを除く。)
二 前号に掲げる船舶以外の法第八十二条の二第一項 各号に掲げる船舶(国内各港間を航海するもの及び船舶に乗り組む医師及び衛生管理者に関する省令第六条 に定める区域のみを航海するものを除く。)
三 前二号に掲げる船舶以外の遠洋区域又は近海区域を航行区域とする船舶及び国土交通大臣の指定する漁船
四 前三号に掲げる船舶以外の船舶(まき網漁業に従事する漁船の附属漁船であつて運搬船以外の総トン数二十トン未満のものを除く。)
○2 前項の規定にかかわらず、同項第一号に掲げる船舶であつて、乗組船員数が五十人を超え、若しくは航海期間が三月を超えるもの又は同項第二号若しくは第三号に掲げる船舶であつて航海期間が三月を超えるものに備え付けるべき医薬品等(医療衛生用具を除く。次項において同じ。)の数量は、当該船舶に乗り組む医師、衛生管理者又は衛生担当者(船員労働安全衛生規則第七条第一項 に規定する衛生担当者をいう。)の意見に基づき前項の告示で定める数量を適宜増加したものとする。
○3 船舶所有者は、船舶が国内の港を発航してから次に国内の港に到着するまでの期間が一月を超える場合にあつてはその発航前に、その他の場合にあつては船舶に備え付けている医薬品等の数量が前二項に規定する数量の二分の一に満たなくなつたときに、前二項に規定する数量に達するように医薬品等を補充しなければならない。
○4 船舶所有者は、船舶に備え付けている医療衛生用具の数量が第一項の告示で定める数量に満たなくなつたときに、その告示で定める数量に達するように医療衛生用具を補充しなければならない。
○5 船舶所有者は、医薬品等を医療箱、衛生用品戸だな等に使用しやすいように保管しておかなければならない。
(医療書の備置)
第五十四条 船舶所有者は、船舶(平水区域を航行区域とする船舶及びまき網漁業に従事する漁船の附属漁船で運搬船以外の総トン数二十トン未満のものを除く。)に国土交通省監修「日本船舶医療便覧」を備え置かなければならない。ただし、前条第一項第三号又は第四号に掲げる船舶にあつては、国土交通省監修「小型船医療便覧」をもつてこれに代えることができる。
ねずみ族又は虫類の潜みやすい場所 1年に1回以上薬品により駆除
酸素欠乏場所の酸素の検知 作業前、作業中30分に1回
飲用水のタンク 少なくとも1年に1回、地方公共団体等の行う水質検査
遊離残留塩素 1月に1回 百万分の0.1未満→速やかに改善
飲用タンク・管系の洗浄 少なくとも2年に1回
発航から到着まで1月を超える場合、その発航前、その他は規定する数量の二分の一に満たなくなったとき、医薬品等を補充
遠洋区域若しくは近海区域の船舶、又は第三種の従業制限の漁船であって、総トン数千トン以上 船舶料理士
実技 †
実技試験の参考に、講習の場合から類推してみます。
講習の場合に用いる器具等
一 血圧計
二 聴診器
三 注射器
四 包帯及び添え木
五 人工呼吸及び心臓マッサージの実習用モデル人形
出題の可能性のあるもの(教本より)
取り消し線は、時間や機材により出題される可能性が低いと、私が個人的に思うものです。
環境測定
残留塩素濃度、酸素濃度、ガス検知、騒音計
看護法
安静、体位、解熱・保温、食事、用便の介助、痙攣の看護、意識障害の看護、導尿、浣腸
診察方法
問診、視診、触診、体温の測定、脈拍の触診、血圧の測定
創傷の手当
止血、消毒、処置、包帯
捻挫・骨折の手当
湿布、副木固定
皮下・筋肉内注射
大量皮下注射
医療通信文の作り方
蘇生法
気道確保、人工呼吸、心臓マッサージ
試験時間的に、縫合は出ないと思います。
蘇生法は必須と思われます。普通救命講習、上級救命講習の受講がおすすめです。
血圧・脈拍は、なんと自動でした!が、水銀血圧計、橈骨動脈での脈拍計測は練習しておいた方がいいと思います。
水銀柱血圧計の代替としては、電子血圧計が学会からも推奨されているため、今後は電子式かもしれません。
試験は、手技+口述です。内容に関して、口述で質疑があります。
減点法ではなく、A〜Eのような出来に対する評価と思われます。
実技は、点数が読めないので、筆記で稼げるだけ稼ぐのが良いです。
2015年度 †
去年は神戸だったので受けませんでしたが、今年は横浜なので受験してみます。
実技の内容が不明すぎるので受かるかどうかは分かりませんが、とりあえず様子を見てきます。
2015年度は 2016/1/21 実施です。
受験者数 9人(うち1人欠席)
9:00-10:30 労働生理・船内衛生・食品衛生
10:40-12:10 疾病予防・保健指導・薬物・労働衛生法規
13:30-16:30 救急処置・看護法
申2015/12/01 船舶に乗り組む衛生管理者 5400+430+392
2015/12/12 船舶に乗り組む衛生管理者 受験票到着
試2016/01/21 船舶に乗り組む衛生管理者 392
2016/02/19 船舶に乗り組む衛生管理者 結果発表
2016/02/20 船舶に乗り組む衛生管理者 結果通知到着
通信費 1214
受験料 5400
宿泊費 5600
交通費 8090
+実技練習用
受験して思ったこと †
思ったより簡単だった。
私が受けた2015年度は、学生じゃないかと思われる(受験資格として20才以上)人たちや、長年に渡って船に乗っていたという人まで、全員合格していました。ただし、点数が読めないのは実技だけですので、皆さんきちんと勉強した人たちであることは間違いありません。
しかしながら、実技は緩めの採点であることは想像できます。
この手の試験に対して、道標的なことをするのはあまり気が乗らない(あまりにも受験者が少ないので、影響が大きくなる恐れがある)のですが、今後受ける方への案内としては以下のようなものがあります。
・筆記は過去問をきちんと把握する
・出た薬品の名前を覚える
・実技が壊滅的でもいいように満点を狙う
・実技
・救急救命は必須
・包帯の巻き方、骨折の対応をする
・水銀柱血圧計を使う(2015年度は自動式でしたが、常識として使えたほうがいいです)
・橈骨動脈で脈をはかる(これも自動でした。)
くらいは覚える。
手技の他に、質疑がありますので、基本的な理解は必要です。
あと、中年以降が心配する体の不調を知っているといろいろと役立ちます。
たとえば、高血圧がいくら以上からとか、COPDとか、糖尿病の一型・二型とか。悲しいことに自分のそれまでの知識が得点源になります(ちなみに私はタバコは吸いませんし、糖尿病でもないですが、アルコールは過剰摂取ぎみです)。
救急救命はどこかで講習を受けることをお勧めします。これ絶対です!
私は、前年に他の講習で2回ほど受けています(酸欠硫化水素、特定操縦免許)。消防の救急救命も受けたかったのですが、時期が合いませんでした。
簡単な手順(2016年時点)
・まわりが安全か確認する ← 労働衛生だとやる。有毒物質とか酸欠のことがあるので。(二次災害防止)
・反応を確認する(肩をたたく、呼びかける)
・助けを呼ぶ
だれか来るので、AEDを持ってきてもらう。(全く打ち合わせなしでしたが、補助の人に頼んだらどこからか持ってきてくれました)
通常は119番通報もあるけど、船舶だとどうするのか・・・
・呼吸の確認(今は気道確保は必須ではないです)
・胸骨圧迫(30回。速度100回/分。練習しておかないとなかなか難しいです)
・気道確保・人工呼吸2回
試験官は胸部が膨らむことを確認していました。
気道確保と鼻からの漏れに注意。
・胸骨圧迫・・と繰り返す
AEDが来たら
・持ってきてくれた人に心肺蘇生が出来るか聞く。(心肺蘇生の継続が最重要)
できる場合、心肺蘇生を「速やか」に交代してAEDの準備をする
・AEDの電源を入れて、指示に従う(電極などの操作の前にまず電源!)